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要注意!高齢男性の尿路感染症、なりやすいワケ―福岡薬院ひ尿器科コラム

2025年07月19日

「尿路感染症」と聞くと、多くの方が若い女性の病気というイメージをお持ちかもしれません。しかし、実は高齢の男性にとっても決して他人事ではなく、むしろ注意が必要な疾患なのです。加齢とともに体の変化や様々な健康課題が現れる中で、なぜ高齢男性は尿路感染症になりやすくなるのでしょうか。この記事では、泌尿器科医の視点から、その具体的な「ワケ」を詳しく解説し、ご本人やご家族ができる予防策、そして早期発見のポイントについてお伝えします。健康で穏やかな日々を守るために、ぜひ最後までお読みください。

 

高齢男性と尿路感染症の意外な関係

 

尿路感染症とは、腎臓、尿管、膀胱、尿道といった尿の通り道(尿路)のいずれかの部位で細菌などによる感染が起こる病気の総称です。膀胱で起これば膀胱炎、腎臓まで炎症が及べば腎盂腎炎と呼ばれます。一般的に、女性は男性に比べて尿道が短く、また肛門や腟と尿道口が近いため、細菌が侵入しやすく、尿路感染症にかかりやすいとされています。

 

ところが、年齢を重ね、特に高齢期に入ると、男性の尿路感染症のリスクが徐々に高まってくるという、いわば「逆転現象」が見られるようになります。さらに厄介なことに、高齢者の尿路感染症は、発熱や排尿時の痛みといった典型的な症状が出にくく、代わりに「なんとなく元気がない」「食欲がない」「普段と様子が違う」「急にぼんやりしている(せん妄)」といった非特異的な症状で現れることも少なくありません。そのため、発見が遅れたり、他の病気と間違われたりすることもあります。しかし、高齢者の尿路感染症は重症化しやすく、時に敗血症といった命に関わる状態に進展する可能性もあるため、決して軽視できないのです。

 

なぜ?高齢男性が「なりやすい」7つの理由

 

では、なぜ高齢の男性は尿路感染症にかかりやすくなるのでしょうか。その背景には、加齢に伴う身体的な変化や、様々な健康上の問題が複雑に関わっています。主な理由を7つ挙げてみましょう。

 

①前立腺肥大症の影響: 高齢男性の尿路感染症の最大の原因とも言えるのが前立腺肥大症です。前立腺が肥大すると尿道を圧迫し、尿の勢いが弱まったり、排尿後も膀胱内に尿が残りやすくなったりします(残尿)。この残尿は、細菌にとって格好の栄養源となり、繁殖の温床となってしまうのです。

 

②膀胱機能の低下:加齢とともに膀胱の筋肉も衰え、尿を溜める力や押し出す力が弱まります。また、膀胱の知覚が鈍くなり、尿意を感じにくくなることも。これらも残尿を増やし、感染リスクを高めます。

 

③免疫力の低下: 年齢を重ねると、誰でも全身の免疫力が徐々に低下していきます。細菌に対する体の抵抗力が弱まるため、若い頃なら問題にならなかった程度の細菌でも感染を起こしやすくなります。

 

④基礎疾患の存在:糖尿病は、高血糖状態が免疫機能を低下させるだけでなく、神経障害による排尿障害(神経因性膀胱)を引き起こし、尿路感染症のリスクを高めます。また、脳梗塞やパーキンソン病などの神経疾患も排尿コントロールに影響を与えることがあります。

 

⑤尿道カテーテルの使用:病気や手術後などで尿道カテーテルを長期間留置している場合や、自己導尿(自分でカテーテルを使って排尿すること)が必要な方は、カテーテルを介して細菌が侵入するリスクが常に伴います。

 

⑥水分摂取不足と脱水:高齢になると喉の渇きを感じにくくなったり、トイレの回数を気にして水分摂取を控えたりしがちです。水分摂取量が減ると尿量も減少し、尿で細菌を洗い流す自浄作用が低下してしまいます。

 

⑦衛生管理の問題点: 寝たきりの状態であったり、認知症などでご自身での陰部の清潔保持が難しくなったりすると、尿道口周囲に細菌が繁殖しやすくなり、感染のリスクが上がります。

 

これらの要因は、一つだけでなく複数重なり合って尿路感染症を引き起こすことが少なくありません。

 

気づきのサインと家庭でできる予防策

 

高齢男性の尿路感染症は、症状がはっきりしない場合があるため、ご本人だけでなく、ご家族や介護をされる方も「いつもと違う」という変化に気づくことが大切です。

 

典型的な症状としては、排尿時の痛みや焼けるような感じ、頻尿、残尿感、尿の濁り、血尿などが挙げられます。しかし、高齢者の場合、これらの泌尿器症状が目立たず、代わりに原因不明の発熱、悪寒戦慄、全身の倦怠感、食欲不振、吐き気、あるいは急な意識状態の変化(せん妄や興奮、逆に無気力になるなど)として現れることがあります。特に、普段から発熱が少ない方が高熱を出した場合は注意が必要です。

 

家庭でできる予防策としては、まず適切な水分摂取を心がけることが基本です。1日に1000mlから1500ml程度を目安に、こまめに水分を摂るように促しましょう。排尿を我慢しないことも大切です。前立腺肥大症など、排尿に問題がある場合は、泌尿器科で適切な治療を受け、残尿を減らす努力をしましょう。陰部の清潔を保つことも重要です。特におむつを使用している場合は、こまめな交換と清拭を心がけてください。バランスの取れた食事と適度な運動は、免疫力の維持にもつながります。

 

そして何よりも、「おかしいな」と感じたら、自己判断せずに速やかに泌尿器科を受診することが最も重要です。

 

早期発見・早期治療で健康長寿を

 

高齢男性の尿路感染症は、その背景に様々な要因が潜んでおり、若い世代と比べて重症化しやすいという特徴があります。しかし、決して「歳のせいだから仕方ない」と見過ごしてはいけません。

 

ご本人やご家族が、尿路感染症のサインにいち早く気づき、早期に専門医の診察を受けることで、適切な治療につながり、重篤な合併症を防ぐことができます。日頃からかかりつけ医とよく連携を取り、定期的な健康チェックを受けることも大切です。

 

適切な予防策を講じ、万が一発症しても早期に治療を開始すれば、尿路感染症による苦痛を最小限に抑え、QOL(生活の質)を維持し、健康で穏やかな長寿を目指すことが可能です。この記事が、その一助となれば幸いです。

 

 

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