本来、精巣は出生近くになって下腹部の鼠径官を通り、陰嚢へ下降します。
新生児の5%程度には停留精巣と言われる精巣が完全に降りきれない状態が見受けられ、特に早く生まれたり、低体重児であった場合はその頻度が高いようです。
生後6か月までは自然に降りてくると言われていますが、出生時や乳児検診で停留精巣と指摘された場合は、早めに小児の泌尿器科の受診をお勧めします。
実は放置すると将来いろいろなデメリットが考えられます。
・子供を作る能力に影響が出る。
精巣が陰嚢の中にない場合、体温で温められるため精子を作る細胞の機能低下が起こります。手術をしても100%の妊孕性(子供を作る能力)回復は難しいと言われており、早めの対処が望まれます。
・精巣腫瘍が3~4倍も発生しやすい。
早めに適切な処置をしていれば治療も難しくありません。
・精索捻転を起こす可能性がある。
外傷を受けやすくなります。
・身体的な欠損や男性能力に不安を感じる。
精神的にも辛い思いをするかもしれません。
主な治療方法は手術です。
・手術により、精巣を本来の陰嚢内に固定。
自然下降も考えられるので、1歳~2歳のころに行うことが望ましいと考えます。腹腔鏡による術式が可能で、傷跡も小さくて済みます。
定期健診など受診の際に、「陰嚢をときどき触って確認してください」と指示がある場合があります。その際は自宅でリラックスしている時に陰嚢内に精巣があるか優しく触って確認してください。緊張状態だと移動してしまうため、入浴時や眠っている間などがお勧めです。この移動する状態を「移動性精巣」と言います。手術は必須ではありませんが、専門医でないと判断は難しいでしょう。
まとめ
自宅でときどき触ってみて、6か月ごろまでにはっきりわからない場合は、お近くの小児泌尿器科へご相談下さい。これからの心身の発達のためにも適切な治療を早めにご検討下さい。