「トイレに行った後も、まだ尿が残っている感じがする」「薬を飲んでいるのに、スッキリしない残尿感が続く」このようなお悩みはありませんか?
残尿感は、多くの方が経験する可能性のある症状ですが、それが長引いたり、薬を飲んでも改善しなかったりする場合は、注意が必要です。単なる不快感だけでなく、背後に何らかの病気が隠れているサインかもしれません。
今回は、しつこい残尿感の原因、薬が効かない理由、そして考えられる他の病気について、泌尿器科医の立場から分かりやすく解説します。ご自身の症状と照らし合わせ、適切な対処法を見つけるための一助となれば幸いです。
1.残尿感が続くときに考えられる原因とは?
残尿感は、「尿が出きっていない感覚」ですが、実際に尿が残っている場合(残尿)と、残尿がないのに残尿感だけを感じる場合があります。原因は様々ですが、主に膀胱や尿道、そして男性の場合は前立腺に関わる問題が考えられます。
- 膀胱炎が原因のケースとは?
膀胱炎は、膀胱に細菌が感染して炎症を起こす病気で、頻尿や排尿時痛とともに残尿感が出ることがよくあります。特に女性に多い病気です。炎症によって膀胱が刺激され、尿が残っていなくても残尿感を感じることがあります。
- 男性に多い前立腺肥大症との関係性をチェック
男性の場合、加齢とともに前立腺肥大症を発症する方が増えます。前立腺は膀胱のすぐ下にあり、尿道を取り囲んでいます。この前立腺が肥大すると尿道を圧迫し、尿が出にくくなったり(排尿困難)、尿の勢いが弱くなったりします。
その結果、膀胱に尿が残りやすくなり(残尿)、残尿感の原因となります。初期には自覚症状が乏しいこともありますが、進行するとQOL(生活の質)を著しく低下させる可能性があります。
2.薬を飲んでも治らない残尿感…市販薬と処方薬
残尿感に対して、市販薬を試したり、病院で処方された薬を飲んだりしている方もいるでしょう。しかし、それでも改善しない場合は、薬の種類や原因とのミスマッチが考えられます。
- 市販薬で改善しにくい理由とその限界とは?
市販薬の中には、頻尿や残尿感を緩和すると謳われているものもあります。これらは主に、膀胱の収縮を抑えたり、血行を改善したりする成分が含まれていることが多いです。軽い症状であれば一時的に効果を感じるかもしれませんが、根本的な原因(例えば、重度の前立腺肥大症による残尿や、細菌感染による膀胱炎など)を治療するものではありません。そのため、市販薬だけで長引く残尿感を治すのは難しい場合が多いのです。原因に応じた治療が必要なため、症状が続く場合は自己判断せず受診することが大切です。
- 処方薬の効果と使用時の注意点について解説
泌尿器科で処方される薬は、原因に応じて選択されます。例えば、前立腺肥大症には尿道の圧迫を和らげる薬(α1ブロッカー)や前立腺を小さくする薬(5α還元酵素阻害薬)、過活動膀胱には膀胱の過敏な収縮を抑える薬(抗コリン薬やβ3作動薬)、膀胱炎には原因菌に合わせた抗菌薬などが用いられます。
これらの薬は市販薬よりも効果が高いといえますが、それでも残尿感が改善しない場合はいくつかの可能性が考えられます。
例えば、診断が適切でない、薬の効果が不十分、あるいは他の原因が隠れているなどの可能性を考える必要があります。また、薬には副作用のリスクもありますので、医師の指示通りに服用し、気になる症状があれば必ず相談してください。
3.薬が効かないときに疑うべき病気は?
薬物療法で改善が見られない場合、より詳しく原因を調べる必要があります。残尿感の背後には、以下のような病気が隠れている可能性も考慮しなければなりません。
- 膀胱がん重篤な病気の可能性
膀胱がんでも、腫瘍が膀胱を刺激したり、尿の流れを妨げたりすることで残尿感が生じることがあります。特に、血尿を伴う場合は注意が必要です。
4.残尿感が続いて薬でも治らないのまとめ
今回は、薬を飲んでも治らないしつこい残尿感について解説しました。
以下に簡単にまとめます。
・残尿感が続く場合、膀胱炎、過活動膀胱、前立腺肥大症などが考えられる。
・市販薬では根本的な原因解決が難しい場合が多く、処方薬でも効果がない場合は、診断の見直しや他の原因を疑う必要がある。
・薬が効かない残尿感の背後には、膀胱がんなどの可能性も考えられるため、精密な検査が重要。
残尿感は、単なる不快な症状として片付けず、体が発しているサインとして受け止めることが大切です。「年のせい」「よくあること」と諦めずに、症状が続く場合は必ず泌尿器科を受診し、専門医にご相談ください。適切な診断と治療で、悩みを解消していきましょう。