テストステロンは、男性ホルモンの一種で、筋肉や骨の維持、性機能、精神機能など、男性の健康維持に不可欠な役割を果たしています。しかし、加齢やストレス、生活習慣の乱れなどにより、テストステロンの分泌量が低下することがあります。このテストステロン不足は、様々な不調を引き起こし、生活の質(QOL)を著しく低下させる可能性があります。本記事では、泌尿器科専門医の立場から、テストステロン検査の重要性、テストステロン不足の原因と症状、治療法についてわかりやすく解説します。
テストステロンとは?
テストステロンは、男性ホルモンの中でも最も重要なホルモンの一つで、主に精巣で産生されます。男性らしい体つきや性機能の発達に関わるだけでなく、筋肉量や骨密度を維持し、意欲や認知機能、精神状態にも影響を与えることがわかっています。テストステロンは、男性の健康と幸福に不可欠なホルモンであり、そのバランスを保つことが重要です。
2.テストステロン不足(男性ホルモン低下症)の原因
テストステロンの分泌量は、加齢とともに自然に低下しますが、その他にも様々な要因が影響します。
・加齢:一般的に、30歳頃からテストステロンの分泌量は徐々に低下し始めます。
・生活習慣:不規則な生活、睡眠不足、偏った食事、運動不足などは、テストステロンの分泌量を低下させる可能性があります。
・ストレス:慢性的なストレスは、ホルモンバランスを乱し、テストステロンの分泌を抑制します。
・肥満:肥満は、テストステロンをエストロゲンに変換する酵素の働きを活発化させ、テストステロンの減少につながります。
・疾患:精巣の病気、内分泌系の疾患、糖尿病、高血圧なども、テストステロン不足の原因となることがあります。
・薬剤:一部の薬剤は、テストステロンの分泌を抑制する可能性があります。
3.テストステロン不足(男性ホルモン低下症)の症状
テストステロンが不足すると、身体的、精神的、性的な様々な症状が現れます。
- 身体的症状
・筋肉量の低下: 筋力低下、疲れやすさ、身体の痛みなど。
・骨密度の低下: 骨粗鬆症のリスク増加、骨折しやすくなる。
・体脂肪の増加: 特に腹部の脂肪が増えやすい。
・発汗、ほてり: ホルモンバランスの乱れによる自律神経症状。
- 精神的症状
・気分の落ち込み: うつ症状、不安感、イライラ感。
・意欲の低下: やる気が出ない、集中力や記憶力の低下。
・睡眠障害: 不眠、睡眠の質の低下。
- 性的な症状
・性欲の低下: 性的な興味や関心がなくなる。
・勃起不全(ED): 勃起が十分にできない、または勃起を維持できない。
・射精障害: 射精に時間がかかる、または射精できない。
これらの症状は、他の病気でも現れる可能性がありますが、複数の症状が重なる場合は、テストステロン不足の可能性を考慮し、検査を受けることをお勧めします。
4.泌尿器科でのテストステロン検査
泌尿器科では、以下のような検査を行い、テストステロンの値を測定します。
・問診:症状や生活習慣、既往歴などを詳しく伺います。
・血液検査:血液中の総テストステロン値、フリーテストステロン値などを測定します。
初診時には、フリーテストステロンという男性ホルモンの低下があるか調べる血液検査を行います。この検査は午前中のうちに行う必要があります。
テストステロンの血液検査を午前中に行う必要がある理由は、テストステロンのレベルが1日の内で変動するためです。具体的には、テストステロンの濃度は通常、早朝に最も高く、日中にかけて徐々に低下します。このため、正確な診断を行うためには、午前中の早い時間帯に採血を行うことが推奨されています。(また脳からの刺激でテストステロンが下がってないかLHとFSH、またテストステロンを補充すると前立腺癌を悪化させるため40歳以上のかたは前立腺癌の腫瘍マーカーであるPSAの測定を行います。)
5.テストステロン不足の治療法
テストステロン不足と診断された場合、以下のような治療法があります。
・生活習慣の改善:バランスの取れた食事、適度な運動、十分な睡眠、ストレス管理などを心がけることが重要です。
・ホルモン補充療法:テストステロンを注射や内服薬、塗り薬などで補う治療法です。
*当院では、テストステロンの補充療法を行っていますが、保険診療が出来ない薬を使用することになるため、自費診療となります。
・ED治療薬:勃起不全の症状がある場合は、ED治療薬(シルデナフィル、シアリス、レビトラなど)を使用します。
6.テストステロンを増やすための生活習慣
テストステロンの分泌を促進するために、日常生活でできることもあります。
・バランスの取れた食事:タンパク質、亜鉛、ビタミンDなどを積極的に摂取しましょう。
・適度な運動:筋力トレーニングや有酸素運動を定期的に行いましょう。
・十分な睡眠:毎日7〜8時間の睡眠時間を確保できると理想的です。
・ストレス管理:自分なりのストレス解消法を見つけ、ストレスを溜めないようにしましょう。
・禁煙・節酒:喫煙や過度な飲酒は、テストステロンの分泌を抑制します。
7.まとめ
テストステロンは、男性の健康維持に不可欠なホルモンです。テストステロン不足は、様々な不調を引き起こす可能性がありますが、早期に発見し適切な治療を行うことで、症状を改善し、快適な生活を送ることができます。「年のせいだから」と諦めずに、気になる症状があれば、泌尿器科専門医にご相談ください。当院では、患者様のお悩みに寄り添い、最善の治療を提供できるよう努めておりますので、お気軽にご相談ください。